紬のある暮し|その四 | 山形 着物の販売・レンタル・着付け|とみひろ呉服サイト
紬のある暮し|その四
2026.03.28
着物の豆知識
お客様とお話をしていると、
着物との出会いには、それぞれに物語があると感じます。
着物を買った瞬間に物語が始まるのではなく、
それぞれの人生の時間の中で育っていくものなのかもしれません。
「紬のある暮らし」では、
実際に着物と共に日々を重ねていらっしゃる
お客様の声もご紹介していきます。
今回は、着物を日々の楽しみとして重ねてこられた松成様の
さまざまな出来事を重ねながら歩んでこられた時間が綴られています。
「人生とともに」
リタイアした後、私どうしよう?
と考えた時、20代の時に
母に着せてもらっていた着物を思い出しました。
入社当初は、新年の初出勤には
着物を着て出勤していました。
その頃を思い出しました。
婦人雑誌に「和カフェ」の記事が掲載されていて、
そのお店が着付け教室を開いているとあり、
時間的にも費用的にも自分に合っていて、
場所も馴染みがありました。
散歩がてら覗いてみたところ、
庭の奥に古民家風のカフェがありました。
個人経営の呉服屋で、
カフェや着付け教室が併設され、
雰囲気も良くスタッフの感じも良く、
着付け教室に通うことにしました。
スタッフの一人の着物のコーディネートが
自分好みだったこともあり、
自分も着付けを極めたいと思うようになりました。
それが私の着物との付き合い始めでした。
たまたま店主が絞りの着物作家であったため、
友人と共に絞り教室を開設してもらい、
おしゃべりしながら
絞りの着物を作るという楽しみも増えました。
お出掛けは着物と決めると、
友人達も違和感なく接してくれるようになり、
快適な着物生活を送ることができています。
店主が実行委員長を務める
東京キモノショーのお手伝いを、
毎年するようになりました。
昨年5月、体調が思わしくなく
アルバイト先の近くの病院に行くと、
『あなたのお腹に悪性リンパ腫が、
うじょうじょしている』
すぐ入院しなさいと医師に言われました。
その一言で頭の中が真っ白になりました。
『悪性リンパ腫』と告げられ、
東京大学の血液内科に転院し、
2か月半の入院生活を送ることになりました。
外来治療を含め
約8か月間の抗がん剤治療を受けました。
東京キモノショー関係をはじめ、
友人達の励ましに支えられ、
また、自分自身も早く
着物を着てお出掛けしたいとの願望もあり、
徐々に身体につながれていた
点滴や酸素ボンベなどの管も外されていきました。
お蔭様で今年1月、
若干の副作用がまだありますが、
「悪性リンパ腫が消えた」
と医師に告げられました。
松成様
今日のコーディネートは
牛首紬の訪問着に、
JOTAROさんの袋帯を合わせた装い。
着物は肩身替わりのデザインで、
個性が光ります。
効かせ色の帯締めや帯揚げ、
そして帯にあしらわれた星の色が、
上前の段染めと美しく響き合っています。
「ここがつながっているでしょ」と、松成さん。
私なら自然布でまとめそうですが、
その配色の妙に、はっとさせられます。
年齢も近く、いつもお友達のように
お話しさせていただいていますが、
長いお付き合いの中で、
お洋服姿を拝見したことはありません。
寒い日も、暑い日も、雨の日も、
いつも着物姿でお出掛けに。
東京キモノショーのお手伝いもされており、
着物の知識も深く、確かな目をお持ちの方。
退院後には紬の長襦袢や結城縮を新調され、
まだまだ、と言っているようなパワーに脱帽です。
着物は、自分の内面と向き合い、
人生を豊かにするものだと学ばせていただきました。
表参道 店長 宮良