紬のある暮し|その六 | 山形 着物の販売・レンタル・着付け|とみひろ呉服サイト
紬のある暮し|その六
2026.05.29
着物の豆知識
お客様のお話を伺っていると、
着物の楽しみは、身にまとう瞬間だけではないのだと感じます。
幼い頃の記憶や家族との時間、
ふと心に残っている風景。
そうした人生の断片とともに、
静かに寄り添い続けているのかもしれません。
「紬のある暮らし」では、
着物と日々を歩まれている
お客様の声をご紹介しております。
第六回は、お母様から受け継がれた感性について綴ってくださった、
高橋様のお話です。
「私のきものつづり」
私のきもの好きは母譲りです。
外出はもとより、家庭でも母は好んできものを着ていた記憶があります。
私のきものの最初の思い出は、
年の暮れに母が仕立ててくれた
赤い格子のウールのアンサンブルです。
雪国の新年をきもので迎えるうれしさと暖かさに、
すっかりきものが好きになっていました。
また、母の伯母が呉服屋だったので、
母のお供で店を訪ねては、
様々な反物を目にしていたのも影響していると思います。
後年、実家じまいで母の和箪笥から、
数回に分けたきものの領収書が出てきた時は、
母の密かな楽しみ方を
私もそっくり受け継いでいたのかと笑ってしまいました。
習い事や観劇などで着る機会が増えると、
古典文様に惹かれるようになりました。
きものや帯には、格調高い吉祥文様をはじめ、
美しい四季や趣味的な文様など、
多種多様な古典文様が描かれていますが、
いずれも日本人の感性や美意識、願いを感じます。
私が好きな吉祥文様の松も、
〈笠松文〉〈若松菱〉など様々に
デザイン・図案化されていて、眺めて飽きません。
羽裏を〈松葉文〉にした一枚は、
とても気に入っています。
さらに、工芸品や絵画、伝統行事や芸能、
慶事や和菓子などにも古典文様は取り入れられ、
今もくらしに息づいていると知ったのは、
大きな学びになりました。
きものはビタミン。
きものの小径散歩は、私の活力です。
和箪笥は母のぬくもり
大島に袖をとほせば晩年に似る
高橋様
この日のお着物は大島紬に有松絞り。
帯は、松原さんの藍染九寸帯を合わせてくださいました。
私なら、つい科布や黒八丈の帯を合わせてしまいそうですが、
高橋様は文中にも書かれていた“松”の古典柄を、
すっと自然に選ばれる。
その装いに、文化的な奥行きと凛とした美意識を感じます。
短歌を詠まれ、古典文様を愛し、
普段はギャルソンのお洋服をさらりと着こなされる高橋さん。
和と洋を軽やかに行き来しながらも、
どこか一本筋の通ったセンスがあります。
お話の引き出しも本当に豊かで、
お会いするたびに新鮮な驚きと学びをいただいております。
表参道 店長 宮良